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          imperfect2/2




遠くで聞こえた何かが壊れる音、引かれるように緩んだ視界の端に映したドアはバタンと音を立てて勢いよく開いた。
「ダンテ…!」
声を上げて入って来たのは真っ青な顔をしたシャドウ。
目を見開いたかと思うと、次には恐ろしいほどの憎悪を浮かべる、それは一瞬のことで次の瞬間には彼の足は地を蹴っていた。
柄に収まる小刀に近いその武器を恐ろしい早さで抜き取り上に跨がる男に切り付けた。
男はギリギリのところでそれを避ける、黒い布で顔を隠すのも忘れていないのは余裕があるからなのだろうか。
しかしお陰でダンテは自由を取り戻したが、詰めていた息の分入って来た空気に呼吸が乱れた。
一瞬、シャドウが気遣うように視線を投げ掛けたその隙を狙って部屋を風のような速さで出て行った。
シャドウは奴が素早く被った暗幕のせいで顔を見ることができなかったこと、一撃で静脈を切ることができなかった両方を悔やんだ。
しかし追いかけるよりも最優先事項は手枷を付けられ、いまだその場から動くことができないでいるダンテのことだった。
「ダンテ」
声を掛けても正直シャドウはどうすればいいのかわからない。
肩を叩き、慰めの言葉を掛ければいいのか、それは恐らく違う。
「だ、いじょうぶ。少し驚いただけだ」
ウロウロと視線を彷徨わせているシャドウ気付いたダンテは逆に気遣うように笑った。
それは強くも見え、逆に弱くも見せていることに彼自身は気付いていない。
「殺気が無かったから油断した…サンキュ、シャドウ」
忌々しい手枷を半ば力ずくで外しているシャドウは泣きも怒りもしないダンテを気に掛ける。
力の無い瞳が枷を外す手をぼんやりと目で追っている。
痛ましさにシャドウは顔を歪めた。
何ら変わらぬ日々のはずだった、盲目だっただけなのかもしれないが。
ただ笑い、喜びに溢れている日々。
その中で、そ知らぬ場所で要素は徐々に孕んでいたのかもしれない。
よりにもよって一番大切なものを。
すっかり廃れていた色見の無い世界に風を持ち込んできてくれた、盟主に感情を戻してくれたダンテを。
誰かもわからないような奴が壊すなんて。よくも。
「あ奴……許してはおけぬ」
ギリッとシャドウは奥歯を噛み合わせた。
怒りよりも殺気に近いそれにダンテは苦笑いを浮かべた。
「お前の見たことは無かったことにしてほしい、」
ダンテだとてあの男が憎くないわけでは無いが、未遂であるしそれより自分も男であるのだ、それなりのプライドはある。
それに
「バージルには言わないでくれ」
これだけは守ってもらわなければ。
シャドウは思った通り、目を見開き、動揺を隠せずにいるようだった。
「そんな、しかし」
「シャドウ、あの人には言っちゃ駄目だ」
殺気が無かったのに加え、バージルの部下であるということにも油断は確かにしていた。
バージルはダンテ自身が感じるほど、弟という自分を想ってくれている。
知ってしまえば彼は怒るだろう、それにそんな相手が部下であることがわかればあの性格だ、自分を責めるに決まってる。
そんなことさせられない。させてはいけない。
眉を寄せて吐く言葉は深く想っていることが伝わる…しかし「あの人」という呼び方は寂しく思えた。
揺れながらもしっかりした目で見つめられ、シャドウはなるべく優しく肩を抱く。
「承知した」
聞くと同時に力を落としたダンテが倒れるように前にのめり、シャドウはその手に力を込めて支えた。
シャドウは誰にも聞かれない言葉を一人漏らした、「どうして」と。







   -続-







いつも突然で、何が突然で無いのかなんて判断しようがない。




2006.2.23