大学の入学式を迎え、無事に入学できたとなると生徒達の気も緩む。
そうなれば代表の挨拶などをした月は好奇心の塊に囲まれることもしばしば。
「夜神くんって言うんだ〜」
頬を染める少女や、ピタリと寄り添う派手な女が周りに群がる。
もちろん男達だって話をしたいようで、遠くからチャンスをちらちら待っている。
「首席なんてすごいね!昔から頭良かったの?」
幼い顔をした子が声を弾ませて問う。
もう何度目かになる同じ台詞に月は内心嫌気がさしながらも笑顔を向けながら口を開く。
「はい、夜神くんは昔から賢い子でした」
驚いて振り替える。
まだ何も言っていない、いやそんなことよりこの声と口調は。
「何をしてもずば抜けていまして、生徒会長に推薦されるのも当たり前でしたから」
猫背でラフ過ぎる格好、目の下にクマを貯えた男。
キラの敵、探偵L。
月にはすぐに彼だとわかった。
敵対しているからという理由だけでは無い。
Lということを名乗り出られてからというもの彼は恐ろしく付きまとってくる。
友情ごっこに付き合ってやるのもいいか、と始めこそは思っていたが最近ではどうにも過剰過ぎる。
うっとおしい上に気持ち悪い。
なるべく彼に会わないように避けてきたというのに、何故今ここにいて変わりに喋っているのだろう。
「小さいときも先生に頼られてましたからね」
例えば遠足の時…運動会……発表会と次々話を繰り出す。
適当に言っているだけだと聞く立場に回っていたが途中から顔色が悪くなってくる。
当たっている。
いくら警察などの資料にも流石に小さなときのことなんて書いて無いだろう。
「仲がいいと思ってたけど流河くんと夜神くんって幼馴染みなの?」
すっかり話に聞き入っていた輪の中でふいに疑問を口にした。
「そのようなものです」
キッパリと言い切るLに驚いたのは月だ。
何を言ってるんだ!
「いいなぁ、やっぱり賢い人は賢い人とつるむもんなんだ〜」
羨望と感心の吐息を漏らす面々に「いいこといいますね、あなた」と無表情な顔のくせに嬉々した声を出した。
「L!!」
「流河と呼んでください」
冷静であれと常に自分に言い聞かせていた月だったが、この時ばかりは沸き上がってくる怒りを押さえられない。
人前では我慢に我慢を積み重ねたが、彼を誘う形で人目に付かない場所き行くと声を張り上げた。
「何であんな嘘を!」
睨みを利かせているはずなのに相手のLはしらっと冷静な顔を見せる。
「幼馴染みとは昔のことを知っている相手に使うのでしょう?間違っていません」
そこではたと気付く。
「………父さんか」
独り言のように小さく呟く月にLは、さぁと返す。
その様子にまた奥歯を噛み締める。
家族の情報を必要以上に話すとは思えない父から聞いたなんて、どうせ脅したんたろう。
ますます気に食わない。
「お前が何をしたいのか、よくわからない。」
溜息を交えつつ漏らす。
怒りを通り越して恨み、呆れが心を占めている。
「そのうちわかりますよ」
にやと不気味な笑いを浮かべるL。
どういう意味だと思考を走らせようとしたが途中で止める。
くだらないことで疲れてしまったからだ。
そしてこれからLの態度が悪化しないことを深く祈るのだった。
−END−
ほだされていく様が想像できます。
幼馴染がいつのまにか恋人に。
2004.12.15
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