「無い!無い!どこだ!」
荒々しく声を立てる竜崎。
その様子はいつも無気力そうな彼とは違い、とても人間染みている。
普通と違うと言えば、後先考えず何でもひっくり返していることくらいか。
もちろん片付けるのは彼では無いのだが。
「竜崎、どうしました?」
度胸があるのか、あるいは空気を読めていないのか松田が散らかった紙を避けつつ近寄り問うた。
「無いんです!」
苛つきを十分に表した声で叫ぶ。
「何がですか?」
「夜神月監視ビデオ総集編、全24巻です!」
監視ビデオは処分をすると言っていたのでは無かったか。
そんなことを気にも留めていないのか、少し頭を捻り、あ、と顔を煌めかせた。
「ビデオ…あぁ、それなら……」
空きビルの中にしゅるしゅると響く。
『ライトー…』
黒く口の避けた死神は顔に似合わず不安そうな声色で彼を呼ぶ。
「しばらく黙っていればリンゴあげようね、リューク」
ふわりと笑う笑顔の裏で押さえ切れない怒りを表す月。
リュークはりんごが貰えるならこの空気も我慢するかと口を閉ざす。
月は黒いビニールを取り出しながら21本目のビデオの処理に手を伸ばした。
−END−
職権乱用。
どんと来い。どんと恋。
2004.12.15
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