先程から息が漏れる音。
それは穴が開いていて……なんてものでは無い。
「25回目。」
月は聞こえるくらいの声で呟く。
「何がですか?」
それに気付いた竜崎は、ぼんやりと聞き返す。
その間も息は漏れっ放し。
「溜息。気付いてなかったのか?」
あぁ、と小さく呟くと竜崎はまた重い息を吐いた。
どれだけ考えていても悩んでいても、態度に表すことをしない竜崎にしては珍しいことだ。
「どうしたんだ?何かあったのか」
「えぇ。まぁ」
月の問いに、重そうな頭をぐいと上げる。
「実は正式にお付き合いしている人がいるわけです」
「あぁ、うん」
「その人が付き合っているというのにキスさえもさせてくれないんです」
「へぇ」
「だからどうしようか悩んでいて…」
ちらりと視線を送る竜崎。
それを気付いているのか、さらりと返事を返す月。
付き合っている人、なんて一人しかいない。
だからこそ、こんな態度を取っているのだということも月はわかっているだろう。
それなのに、応え方は素っ気無く。
竜崎は悲しくなりもう一度深い溜息を吐く。
落とした頭に、ゆらりと影が落ちる。
何事かと顔を上げたとき、思わず目を見開いてしまう。
「26回目。悩み解決?」
唇に淡い感触。
まるで重いものを全て吸い込んでしまったかのように。
後から漏れたのは甘い溜息。
「27回目。」
月は楽しそうに笑った。
−END−
幸せ逃げるどころか幸せ舞い込んで来た。
2004.12.12
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