聴こえる。
澄んだ声が小さく小さく歌を成す。
何故かそれを聴くと胸が詰まる。
「月くん、それは何という曲なんですか?」
「え、なに……僕何か歌ってた?」
色々な角度から考え、何通りの答えをも考えてやっと聞けたこちらに彼は目を大きく開きあっさりと返す。
少し気抜けをしながらも、言葉を摘む。
「はい、今まで何度か聴いたことがありますが」
「…まいったな、歌っているつもりなんか無かったのに」
自覚が無かったのかとぼんやりと理解して、夜神でもそんなことがあるのかと意外に感じていた。
それと同時に自分の手に力が篭るのが分かる。
「何の曲か心辺りは無いのですか?」
「全然」
恥ずかしそうに眉を寄せ笑う。
私はおかしい……彼に歌われるその歌にさえ嫉妬する。
気持ちが吹き出るかのように、歌を紡ぐことができないようその口を唇で塞いだ。
−END−
すべて、すべて、私のものにしたい。
奪いたい、乱暴なくらいに。
2004.12.9
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