椅子へ案内され、何を言い出すのかと待っていると。


「何だこの大金」


テーブルに出されるアタッシュケースに敷き詰められた金が出された。
「小切手でもよかったのですがわかりやすいと思いまして」
そう答えながらテーブルに乗り切らないケースのいくつかの金具を外し同じように開ける。
「答えになってないぞ」
最後の鍵を開け、全ての中身が同じだとわかると彼に向き直る。
「この現金は月くんの物です」
「なに?」
眉をしかめる月。
竜崎は唇に親指を当て、カリと爪を囓ると口を引く。
「取引しましょう」
目を見開き、長い睫毛が揺れる。
しかし、すぐにいつもの落ち着いた様子に戻る。
「ははっ、取引?僕と竜崎が?」
笑いを浮かべた顔がキッと目を吊り上げ怒りを表わす。
「…キラだと言えとでも言うつもりか」
「そうしてくれるてと有り難いですが月くんが吐いてくれるわけありません、ですから…」
続けようとした言葉を途中で手折る。
「金を積んでまでして欲しいことなのか」
「えぇ」
ピリと冷たい雰囲気。
「いいよ。言ってみなよ」
鼻で笑い、腕を組みゆったり椅子に腰掛ける。
優雅な様でも目から怒りの色は消えない。
お世辞でも機嫌が良さそうとは言えない月に向かって竜崎が若干嬉しそうに口を開く。




「恋人になってくださ……」


「却下」










   −END−


じゃあどれだけの金を出せばいいんですか。
言ってくださいよ、用意しますから。

2004.12.5