暗く狭い部屋。
鉄格子にコンクリートの壁、監視カメラ。
おまけに手足は拘束されている。
まだ4日目だというのに思ったより苦しいものがある。
堅いベッドに横になり、目を閉じ眠りに着こうとしていた。
うとうとし掛けた時、かしゃんと音が聞こえうっすらと目を開ける。
そこには闇に同化しそうな程のっそりと突っ立っている見覚えのある人物。
「竜崎…?何で此所に……」
奴がいるのはホテルであってこんな監禁部屋、特にキラだと断言する人物のところにのこのこ来るだろうか。
月は頭に何通りかの理由を思い浮かべながら体を起こす。
竜崎はじっと目を見つめて動かない。
今一度声を掛けようかと口を開いた同時に竜崎が声を吐く。
「好きです、月くん」
一瞬気の抜けた顔をしてしまうが、すぐにいつもの調子を取り戻す。
「おもしろい冗談を言うな、竜崎は」
「冗談ではありませんよ」
真顔で笑うこと無く即答された返しに体が固まる。
「………うそだろ?」
口から注いで出たのはそんな言葉。
頭がうまく回らないのも仕方ないことだと思いたい。
「実はもう夜神さん…いえお義父さんからお付き合いの許可をもらっています」
薄い紙に綴られた文字、そしてそれの一番下には父のものと思われるサインと判。
「何だそれは!勝手に……!!」
手を伸ばそうとして体を動かすが、後ろ手に縛られていてる現状ではそれも叶わない。
竜崎もこれみよがしに紙を丁寧に畳むとポケットに入れてしまう。
「大体僕の許可はどこへ行った!?」
「今取ったじゃないですか?」
呆気に取られてしまい、声が喉から出て来ない。
「月くん、好きです」
ずいと近付いて来る。
ざわりと悪寒を感じ体を後ろに引く。
「わ、悪いけど…」
徐々に寄ってくる竜崎に顔が青ざめ、後ずさる。
「断るなんて許しませんよ」
追い詰められ、背中には壁。
これでもというくらいに顔を寄せられる。
「月くん……」
今まで聞いたことが無いうっとりとした声で名前を呼ばれる。
嫌な汗が止まることなく背中を伝う。
「………っは!」
息をいきおいよく吐き出す。
周りを見回すと冷たい壁に牢屋。
当然のことだが竜崎はいない。
「夢……?」
一人そうつぶやく。理解していても恐ろしくて自分自身のセリフで確認しないと安心できない。
「そうか夢か夢だよな…あんな馬鹿らしい……はは」
監視カメラの画面を一人見つめる探偵。
その後ろにはコートの男が立つ。
「月くんの許可をもらいました」
ひらりと指で摘んだのは薄い紙。
それはどこかで見かけてあるような。
その紙を後ろの男が丁寧に受け取ると、鞄にしまう。
「これで月くんは私もモノです」
監視カメラ越しにじっと月を見つめ、いやらしく笑った。
−END−
利用できるものを利用しない手は無いでしょう。
2004.12.4
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