捜査に参加するようになってから、もう何度目かのチャイムを押す。
「竜崎、僕だ」
返事は無いが、ガチャリと鍵が開く音がする。
慣れてはいるが、ドアくらい開けてもいいのにと心の中で悪態を付く。
溜め息を吐いてノブを回し。
「入るぞ」
高いだろうスイートのドアがゆっくりと開く。
「ぅわ…!」
思わず大きな声を出してしまったのは、予想外の展開だったから。
体が突然冷える感覚。
目を見開くと、間近にはあの猫背の男。



「隙ありです」



いつもの乏しい表情で、呟く。
手には何やらカラフルな銃のような物。
そうか、そうか。
この冷たさは、そいつのせいなのか。
「竜崎……何だ、これは」
髪の毛や服が重い。
顔や髪から水が滴り、体を冷やす。
「面白い物を頂いたので」
手の中にあるのは夏の水のオモチャ。
ちらりと部屋に目を向ける。
こんな物を買い与えるのは松田しかいない。
「で。何で僕に水を掛ける」
ジロ、と竜崎を強く睨みつけてやる。
もう冬になろうというときに、これは酷い。
風邪でも引かせるつもりか。


「水も滴るいい男というものを見てみたかったんです」


もう一度彼が指を引く。
銃口から水が飛び、また服に掛かった。
「あぁ、そう」
盛大な溜め息を吐く。
やめろ、と言ってもやめるとは思えず、もう半分どうでもいいと思い始めている。
「予想以上でした」
うっとりと笑いを浮かべる竜崎。
いやらしい目線を横目で避け、髪の水を払う。

そして奥で寛いでいる原因と、色ボケ男をどう痛めつけようかを策を練り始めた。










   −END−


水に濡れても濡れなくていい男だと思いますが。

2004.11.27