大学内、同じ科目を取っている女の子に声を掛けられた。
その子と話すのは初めてでは無かったし、何より勉強の話だったから長々と話す事になっただけだ。
しかし、それを見つめている視線があったことに気付かなかった。
「夜神くん今の女は誰ですか?」
「…またか流河」
どこから見ていたのか据わった瞳で見つめてくる。
思わず顔を顰めてしまった。
「誰なんです?やけに親しいようでしたが?」
また、というのはこれが一回や二回では無かったから。
ややこしくなるからなるべくなら見られたくなかったが。
どうやらバッチリ見られていたらしい。
「友達だよ」
「本当に?」
疑っているのは見ればわかる。
表情が乏しい彼でも長くいればわかってもくるというものだ。
明らかに機嫌が悪い。
僕が悪いと言うのか、この男は。
「あのな、流河。いい加減しつこいぞ」
毎回ここで僕が引いて、流河に謝る。
そして何とかして誤解を解くところ。
しかし。今まで耐えていたが今日はついに口にする。
我慢もできることとできないことがあるというものだ。
「何で喋っていただけで関係を持つ事になるんだ」
理解ができないわけでは無いが、別に浮気に走るようなものでも無いことは見れば分かるだろう。
一部始終を見ていたのなら尚更。
流河は不貞腐れたのかムッと眉間に皺を刻む。
「わからないじゃないですか」
「そんなに僕は信用が無いのか」
ほぼ毎日一緒にいて、同じベッドにまで入る仲なのに。
普段キラとしての疑いを掛けているくせに、恋愛でもそうだと流石に腹も立つ。
こちらの態度に少し彼が押されるのが見える。
自分の言ったことで僕が怒っているとわかっているらしい。
「そういうわけでは無いのですが…」
「嫌なんです」
苦しそうに言葉を呟き、顔を背ける流河。
彼にしては珍しい表情だった。
理解はできているが嫌なものは嫌だということか。
黙り込んで何も言わないなんて卑怯だろ。
僕は大きく息を吸うと、深い深い溜め息を漏らす。
「わかった、あまり話さないようにする」
「夜神くん!」
譲歩した案に流河は喜々した声をあげ、抱き締めてくる。
彼の嬉しそうな声を聞きながらもう一度溜め息を吐く。
そして思うのだ。
僕も大概甘いな、と。
−END−
なんだかんだ言って、嫌じゃないんだ。
こういうの。
2004.11.16
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