「月くん……ッ!!!」








後ろから声が聞こえたのと同時にふらりと身を後ろに引く。
今まで自分が居た場所には手が伸びていた。
その手は交差されていて空気を掻き抱いていた。







「………竜崎」

呆れて見る目線の先は、手を伸ばして突っ立っている男。
そいつもこちらをじっと見返す。



「君は"諦め"という言葉を知らないのか」

そう、この男。
同じ行動を一週間以上何時間かごとに、それはもう毎日繰り返すのだ。
いくらなんでも呆れるというもの。
何故こんな行動を。何故避けられるとわかっていてするのか。
全く理解できないところだった。
「いい加減やめたらどうだ?」
無駄なのだから、する必要なんて無いだろう。
それならば捜査に時間を割く方が合理的だ。
キラとしては捜査してもらわない方が有難いのだが。
竜崎は腕を戻し、いつものようにだらりと立った。


「そうですね、もうやめにすることにします」








竜崎はさらりと口にする。
やっと聞くことができたその発言に、息を吐いた。

「月くんの大体の行動はわかりましたから」

言葉を続ける竜崎。
静かな口調はまさにL。
言っていることがわからず固まっているこちらを見て竜崎はいやらしく唇を引く。











「…………これからです」











もう一度不気味な笑みをこちらに向ける。
そのまま丸まっている背を向けて、部屋の定位置に戻る竜崎。
やっと理解できたときには、背中に冷たいものが走った。
コイツはただ同じ行動を取っていただけというわけじゃないようだ。




「やってくれる」




これからの自分の身を考えると鳥肌が立たずにはいられない。
どうすれば奴から逃げ切れるか。
どうやらそのことばかりに頭を走らせることになりそうだ。










   −END−


竜崎、ただいま月について勉強中。
月、ただいま護身術について勉強中。

2004.11.07