顔を見たのは夜神家の資料。
動く姿を見たのは監視カメラ。
声を聴いたのは盗聴器。

映像から感じた彼はとても高貴で美しかった。
これが、あのキラ。


夢中で彼を追った。
どんな人物か。
話し方はどうなのか。
笑い方は、怒り方は、泣き方は?




「流河?」




視点を合わすと彼の顔が近くに見えた。
人の集まる大学だというのに意識が飛んでしまっていたらしい。
キラかもしれない夜神月の目の前で。
全く、この暖かい陽気は敵かもしれない。
そこで先程までの思考が頭に甦ってくる。
ベンチから逆光に立つ彼を見上げると、彼が首を傾げる。
色素の薄い紙が風でさらりと流れた。




「キラがこんなに美しいなんて思ってもみませんでした」




口から無意識に言葉が漏れた。
まるで思考のまま話してしまっている。
この陽気のせいなのか、それとも?
夜神は少し目を見開いてから口を軽く引きつり眉を潜める。

「それはどういう意味だ、流河」

これは初めて見る顔だ。
足りない、足りない、足りない。
どれだけ紙の上の情報を集めても。
次から次へ溢れる。
キラであり夜神月である彼。
こんな気持ちを何と言うのだったか?




「おい、流河?」




彼の言葉が体を満たす。
癖、趣味、仕草。
どんなものでも私を奮い立たせてくれる。





こうして毎日、私はまだ知らない彼に出会うのだ。










   −END−


それが恋でしょう?

2004.11.06