Lという人物の考えはとにかく変わっている。
それがまた本気だからすごいのだが。


「私と月くんの子供ならきっと頭の良い子が産まれますね」


こんなことを言ってのける。
これは冗談などでは無く至って彼の普通な発言なのだ。
知的な頭脳の分だけ常識的思考回路が混線しているのかもしれない。
「私以上、月くん以上の聡明な子」
黙ったままの月。
それをいいことに竜崎は話を進めていく。
「容姿もきっと月くんに似て美人でしょう」
にやりといやらしい笑いを浮かべてつま先から頭の先までじろじろ眺めている。
「髪は私の黒髪ですかね」
少し自分の髪の毛を引っ張りながら嬉しそうに呟く。
そして月を見やり、自信有り気に口を開いた。



「誰よりも賢く、誰よりも美しく、優しさ人当たりを兼ね備えた子供を作ってみませんか?」



今日言わんとしていたことを詰まりもせず躊躇もせずきっぱり言ってみせる。
しかしそれでも月は黙ったまま。
「月くん?」
流石に竜崎も気になってくる。
怒るにしろ喜ぶにしろ、何故反応を示さないのか。
もう一度竜崎が呼びかけようとしたとき、月は唇に当てていた手をゆっくりと外し、口を開いた。














「僕の髪質、髪形で、竜崎の目元、猫背、癖そんなものを引き継いだ子って果たして可愛いのかなと思って」













ツッコミどころが違う、と周りに人がいれば言ってくれただろう。
月は子供が欲しいと言ったとき竜崎がどんな手を使っても本気でするだろうことを理解しているらしい。


「しかも女の子」


思ってもいなかった月に発言に竜崎は固まる。
いや、もしや月の出した子供案の方に動けなくなってしまったのかもしれないが。
竜崎が出した子供像と同じくらい可能性としては有り得ることだけに。

その様子に気付いた月は「ん?」とそ知らぬ顔で首を傾げた。










   −END−


可愛い子が生まれるか生まれないかは微妙なところ。

2004.10.25