二人でひとつのベッドに入って眠る。
それはあまりに滞在が遅くなったから、という特に何の理由も無いもの。
不必要に大きなベッドの端と端で離れて寝転んで。
背中を向ける竜崎。
冷たいシーツが余計に冷たく感じて少し身震いをする。
「どうしました?月くん」
シーツ越しにそれを感じたのか竜崎が顔を上げた。
「え、別に…」
寝ていれば気付かなかったものを、まだ眠りについていなかったらしい。
いや、もしかしたらキラと思われる人物の隣で眠るつもりはないかもしれないが。
「もしかして寒いですか?」
「………いや」
考えてNOと断った。
別に寒さを感じるわけでは無かったから。
しかし竜崎は納得できなかったらしい。
「月くんは強がることが好きですから」
竜崎はガリと爪を噛む。
イラついているのだろうか。
「本当はどうなんですか?」
じっと真っ黒な瞳に見つめられる。
嘘を付いていると判断されているらしい。
これは認めないと許されない状況のようだ。
苦笑を漏らさずにいられない。
「ちょっとね。でも大丈夫だよ、ホント」
暖まらないシーツの冷たさはあったから、一応肯定してみせた。
竜崎は「やはり…」と呟く。
「暖房を上げてきましょう」
体を起こした竜崎の腕を取って静止を掛ける。
「いいよ、竜崎」
わざわざ暖房を上げてもらうことでは無い。
彼は何を考えているのかしばらく黙って僕を見つめた。
「……そうですか、じゃあこうしましょう」
言葉が放たれたときには、目の前に竜崎の顔があった。
突然距離を縮め、体を抱きこまれている状態に思考が一瞬停止してしまう。
「くっついて寝れば少しは暖かいですよ」
竜崎に抱き締められている。
低いながらも一人ではできない暖かみが体を徐々に支配していく。
ゆっくり重ねる心臓の音が心地よかった。
「…そうだな」
少し不思議そうな顔をした竜崎。
体を摺り寄せてその暖かさに甘えることにした。
素直な行動も、「寒さ」のせいにしてやる。
本当のことは言ってはやらない。
−END−
今日は特別だから。
この寒さも暖かさも今日は特別。
2004.10.24
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