二人でホテルで捜査資料を捲る。
そう、最近では珍しい二人きりだった。
そのことに竜崎の機嫌は急上昇で、月が来た時から竜崎にしてはテンションが高かった。
「…月くんお茶でも」
無表情ながらにウキウキとソファに座っている月に話しかけた。
顔を覗き込んだ瞬間、竜崎は目を見開く。
「ら、月くん…?」
「竜崎……」
いつも気高く、美しい月。
竜崎の最も愛する彼が、瞳を濡らしていた。
今までどれだけ酷いことをしても、屈辱的な思いをさせても泣かなかった彼が。
プライドの高い夜神月が。
彼が、泣いている。
竜崎は酷く混乱していた。
そして恐ろしい怒りに駆られていた。
どうして泣いているのか、誰が泣かせたのか。
自分で泣かせるのと誰かに泣かされるのは違うらしい竜崎。
探偵Lは有り得ない速度で推理を始めていた。



そしてとある人物が浮かび上がる。













「松田ですね…?松田が泣かせたんですね……?潰しにかかります」








ドスの利いた低い声が響いた。
月はそれを聞いてぎょっとする。
「竜崎、ちが…っ!」
「もう安心ですよ、月くん」
否定しようとした言葉は竜崎の男気溢れた態度に掻き消された。
素で聞こうとしない竜崎に月は溜め息を吐く。
「………そう」
月は考えていた。
涙が出てしまったのは目にゴミが入ったからなのに、と。
しかしもう止まりそうに無い竜崎を見て更に思う。
結果、月が導き出した答えは。










「僕に被害が無ければまあいいか」






哀れ松田。










   −END−


僕が泣くなんてそんな馬鹿なこと。

2004.10.20