「私は月くんみたいな人が理想だったんですよ」



ベッドで二人横になり、意味の無い会話を繰り広げていた中、竜崎が突然そんなことを言った。
「は?」
何の冗談だと月は顔を歪ませたが、竜崎がうっとりとした顔を見せたので本気だと理解する。
月の髪に触れながら竜崎は言葉を続けた。
「恋人にするなら聡明で、運動神経も良くて人当たりも良い器用な人」
一度呼吸を置いてから、目を合わせる。
「そして私と対等に話せる人」
ピクリと月が微かに反応をしたのを、口だけで笑う。
「月くんがピッタリなんです」
今まで竜崎と張り合うだけの人物などいなかった。
竜崎は月と出会って、これほどにも無い理想を見つけた。
「へぇ…」
興味無さそうに溜め息を交えた声を出した月。
そんなことなど気にしないように竜崎は続ける。
「私は幸せ者です」
「そう」
眠りに入ろうかというところらしく、曖昧に言葉を返す月。
それを知っていて竜崎は更に言葉を吐く。


「月くんの理想はどんな人ですか?」


当然のように月に問う。
特に興味を示していなかった月が、身体を少し起こして言葉に答える。
「そうだな…しいて言うなら……」
竜崎は紡がれるだろう言葉を嬉々して待った。










「目の下にクマが無くて猫背じゃない辛党の女の子かな」










「………そうですか」


「うん」










   −END−


お前が理想なんて有り得ないだろ?

2004.10.17