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目は書類に向けながら、音を鳴らしてコーヒーをかき回すL。
僕は今までのキラ事件の殺人者のリストを目で追う。
必要以上に会話の無い捜査本部は実に静かだ。
余計なことを言わないのは有難いところだが。
好きだ、愛してるだの言い始めたら奴は止まらない男だし、その分仕事に打ち込むのはキラとしては嬉しくないが、僕としては嬉しいところだ。
チラリと横目でLを見ると、無表情で目だけ淡々と動かしている。
人間らしくない男だ。
そういえば笑顔なんて見たことが無い。
悔しそうな顔や拗ねた表情は別として。

竜崎の笑った顔か。




「竜崎」

「どうしました?月くん?」
彼は顔を上げこちらを向く。

「実は僕の父さん……」

「朝日さんが?」
深刻な顔をした僕に、竜崎も少し眉を潜めた。
一呼吸置いてから、口を開く。












「付けヒゲなんだ」











「……………は」










短く声を発してから、竜崎はそのままの体勢で動かなくなった。
それでもいつもと何も変わらない。

「ハハ、冗談だよ」

軽く笑うと、竜崎は砂糖いっぱいのコーヒーを口にした。
「ビックリしました…」
さもいつもと変わらない口調でそう言う。
「ビックリした?そんな顔してないけど…」
変わらない表情と口調に、彼が本当に驚いているなんて思えない。
折角の策が台無しだ。
「それに、僕としては笑って欲しかったんだけどな」
笑顔は見ることができなかった。
竜崎は自分の手の中のコーヒーカップを見つめていたかと思うと、やがて先程と同じように書類に目を向けた。
つまらない結果に息を少し吐いて、僕も同じように視線を紙切れに戻した。














「月くん月くん」

竜崎がコーヒーを4杯、紅茶を3杯飲み終わった頃、突然声を掛けてきた。
キラのことか、それともまたケーキが欲しいというつもりか。
どちらにしろ、今声を掛けられるのはさほど嫌では無かった。
休もうと思っていたところだからちょうどいい。
「何?」
僕には珍しく優しい声が出た。
竜崎は真剣な顔つきで真っ直ぐ僕を見る。

















「実は私、月くんをおかずに毎晩抜いてるんです」














「…………」


「…冗談です」

竜崎はつぶやくと、残り少ない紅茶に手を掛けた。
「どうしました?笑うところですよ」
固まったまま動かない僕を見て、下から覗き込む。
それにも反応はできない。

「月くん?」

もう一度名前を呼ばれたところで、息を大きく吸い込んだ。
そして、







「竜崎、冗談は嘘を言うものだ」







目を思い切り吊り上げて言ってやった言葉。
竜崎は「そうですね」と口の端を上げた。










   -END-


…らしいよ。

2004.10.07