「結婚してください」
「は……」
突然の言葉に疑問符にもならなかった。
竜崎の言うことは突飛だが、これは突飛過ぎないか?
「しましょう、月くん」
押したように言われ、深みに嵌りそうな意識は戻った。
「ハハ…何言ってるんだ竜崎……?」
冗談だろうとこじつけて薄く笑う。
しかし竜崎は何も反応せずただこちらをじっと見つめるだけ。
その目はどこまでも真っ直ぐで、すぐに笑いが消えてしまう。
「…本気か?」
「えぇ」
簡潔ながらもきっちりとした口調。
これは嘘なんかじゃない。
「に、日本では男同士の結婚を認めて無いんだよ、残念だけど」
当たり前のことなんだ、結婚なんてできるわけが無い。
なるべく被害の無いように拒否をした。
焦って余計なことを口走ってしまわないように。
それに、こちらが気を立たせればLに強行突破されそうな予感がしたからだ。
「結婚できる国に行きましょう」
そうくるか。
「僕は日本を離れる気は無いんだよ、非常に残念だけど」
結婚できる国があったって、僕が日本にいれば結婚なんてできないだろ。
少し手に汗を掻きながら表面上笑って見せた。
Lは「そうですね」と小さく呟く。
「では法律を変えましょうか」
あっさりとそんなことを言う。
「法律…!?」
「私の力を持ってすればできないことなどありません」
確かにIQの高い、Lという存在ならできないことも無いだろう。
しかし、何故だ。
そこまでして僕と結婚なんかしたいのか。というか、してどうする。
「う、嬉しいけどそんなことすればLの評判や信頼が下がるからやめておいてよ、本当に残念なんだけど」
「そうですか……」
唇に指を掛け、伸ばしている。
斜め上の空中を見つめ、黙った。
その間も何を考えているのかわからない。
しかしもう策は無いだろうと踏んで安心して息を吐いた。
「残念なんだけどね」
もう一度繰り返した言葉に安堵している自分がいる。
そう、残念なんて微塵も思ってはいないがもう安全だ。
「では隔離都市を作りましょう」
「は……!?」
大きな声で聞き返してしまった。
それは当たり前のことだと思う。
「私たちの仲を反対する愚かな人間なんていりません」
何を恐ろしいことを言っているんだ、コイツ。
あぁ、でも竜崎ならやりかねない。
どうすればいい、どうすれば……!
そんなことを考えている間に、竜崎は電話を取り着々と準備をしていたらしい。
気が付いたときには
「準備は整いました」
そんなことを嬉しそうに言われてしまった。
−END−
できないことなんて何も無い、なんてこと言うなよ。
2004.10.06
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