「流河、今日講義終わってから空いてる?」



前を歩いていた夜神月が突然振り返り聞いた。
一限目の講義へ向かう夜神くんの後ろを、付いて歩くのはいつものこと。
キラとしての疑いがあるのはもちろん、彼以外興味は無い。
「はい、今日は授業は他にありませんから」
そもそも大学へは夜神月の行動を見に来ているのだから、彼が取っていない授業なんて出ても意味なんか無い。
夜神くんくらいならわかるとは思うが、聞くだけ聞いてみたというやつか。
「じゃあ、ちょっといいかな」
「………はい」
返事を聞いた夜神くんは、じゃあ後でねと言って教室に入ると早々と席に腰を下ろした。
私は彼が見える斜め後ろの席を選ぶ。
じっと見つめても彼は気付かず、隣の友人らしい男と話している。
いつもはそこで爪でも噛んでしまうところだが、今日は違う。


ついに来た。待ち望んでいた瞬間。





夜神月からの告白。


















「先生から頼まれてね。流河を呼んでこいと言われていたんだ」




付いてきて、と言われて嬉しさをかみ締めながら素直に後ろを歩いていた。
あっさりと笑顔で言われて、今までの胸の高鳴りが無かったかのようにすとんと気抜けした。
「なんだ、そういうことですか」
ポロリと本当のことを言ってしまった。
それぐらい今の私は気が抜けていたんだろう。
「どうかしたか?」
わけが判らないという顔をしている。
どうしようか少し考えてから口を開く。


「……てっきりキラだと告白してくれるのかと思いました」
















「いやむしろ愛の告白をしてくれるのかと思いました」








今のまさにそれを待っている。
実は、なんて言ってはくれないだろうかと少ない可能性をかけて彼を見つめる。


「ハハ、まさか」


あっけらかんと否定されてしまう。
「僕はキラじゃないしね、そんなこと有り得ないよ」
まあ、その台詞は何度も聞いた。
自分がキラだと自首する可能性はゼロに近い。
いや、私が待っているのはそれでは無く…… 彼は「そして」と続ける。














「後者は、僕の命が尽きたとしても有り得ないよ」












今まで見たこと無い最高の笑顔で彼は笑った。










   −END−


どちらでもいいですよ、私は。

2004.10.05