学校というの意外にいるものだ、アレが。
不意を突かれたのもあって思わず、ぅわ、と短い声を発してしまう。
女の子が泣き叫ぶほどでは無いが嫌いには違い無い。
好きになれという方が無理があると思う。
とにかく駄目なのだ、生理的に。
………あの黒光りした虫は。
「へぇ、月くんでも苦手な物があるんですね。意外です」
壁際で触角を動かしながら止まっているあの虫を見て、平然な顔をしてそう言った。
一般的に嫌いな人が多いしたいしたことでは無かったが、弱みを握られたようで不快な気分になる。
「失礼だな。流河は弱点無いわけ?」
言われるだけでは負けている気がしたので聞いてみた。
Lという人物が、キラと疑っている僕にそんなこと不利になることを言うとは思わなかったが。
「弱点…ですか……そうですね…」
親指を唇に当てて視線を中にさ迷わせた。
「あります」
思っていなかった返答に驚いた。
まさかそんなことを流河が馬鹿正直に答えるとは思っていなかったからだ。
できるだけ不自然にならないように口を開ける。
「や、っぱりあるんじゃないか。それで、何?」
「聞きたいですか?」
言葉に詰まってしまったが、流河は気にしていないようだった。
いや、フリだけかもしれないが。
それでも何も無かったように話を進めようとする。
流河の弱点?どうしたって気にはなる。
「そりゃあ…」
どう答えればキラらしく無いかという考えも過ぎったが、素直に聞いてみることにした。
「そうですか、それはですね・・・・」
流河がずいと近寄ってきて、間近で見つめてくる。
何を言うつもりかわからない、そのことにいやに心臓が早くなった。
ゆっくりと手をこちらに伸ばしてくる。
まさか……
……首を絞められる。
思い当たったときには振り払えと体に命令を送れないほど焦ってしまっていた。
「私の弱点は………」
マズイ。
思っていた衝撃は無く、そこにあるのは……指?
「月くんです」
唇を竜崎の人差し指で柔らかく押されてしまっている。
ぽかんとしてしまった頭に、流河の少し嬉しそうな表情が入り込んでくる。
ハハ、と笑いが浮かんでくる、それと同時に一つの言葉も。
「死んでくれる?」
−END−
弱点は同時に強みでもある。
2004.10.04
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