探偵という職業は私の天職だと思う。
常に相手の裏を書き、プロファイリングを怠らない。
頭がいい者には頭で勝負、更に上を行くしかない。










頭が人の年相応より数倍賢く、人を欺くのも得意だろう。


さて、それでも彼は人間だ。
人というものは慣れというものに弱い。





「月くん、好きです」
じっと見つめながら言葉を口にする。
「何言ってるんだ、そんな冗談男に言うものじゃないぞ」
笑いきれなかった口が妙につり上がっている。
彼には珍しく動揺を隠し切れないらしい。










人間というのは決まってそうだ。
日々繰り返されていると慣れが生まれる。







「月くん、好きです」
じっと見つめながらいつもの言葉を口にする。
「ハイハイ。ところで手を離してほしいんだけど」
呆れたように返事を二回、その後にちろりと手元に視線を送った。
彼の右手と私の左手をぎゅっと握っているその手を。
「嫌ですか?」
「嫌だ。おい、指を絡めるな」
逃げる隙を与えず、指を差し込みぎゅっと握った。
眉を潜めて振り払おうとする手は決して離さない。










人間というのはそういうものだ。
そんな自分に気付かない。







「月くん、好きです」
この言葉は欠かさずに。
「わかってるよ。で?竜崎、この体勢何だ」
いとも当たり前のような返事をくれる。
その後に続く言葉は疑問系などでは無いことはわかった。
けれどあえて答える。
「抱き締めているんですが?」
「違う!そうじゃなくて!あぁもう離せ!!」
案の定声を荒げる彼を両腕に捕まえたまま。
引き剥がそうと、もがかれようと無駄なことだった。
「嫌です」
キッパリ言葉を吐くこちらに溜め息を漏らしている。
「手を繋ぐだけじゃ駄目なのか?」
歯切れの悪い声で譲歩案を出した。
「はい」
くすりと笑いが漏れてしまう。
「耳元で喋るな!笑うな!気持ち悪いな!!不愉快だ!!!」
夜神月は声を上げて、また引き剥がそうとする。
しかし腕も捕らえてしまっては、彼も動けないだろう。






人間なんてそんなものだ。
こうして彼は慣らされていく、私という人物に。







次は、キスです。











「調子乗るなよ、竜崎」


腕の中で、笑いながらもキッパリと言われる。
危ないと本能で感じ、身体を離す。
















どうやら一筋縄ではいかない人間らしい。










   −END−


竜崎の課題。

2004.10.01