学生の憧れ東応大学を首席で合格。
容姿も美しく、女性にすら引けを取らない。
人当たりもよく優しい。
その上スポーツも万能と来ている。
これでモテないはずが無い。
そう、実際恐ろしいほどモテるのだ、夜神月という男は。
さすが私の愛する人です。
「そうだね、割と古風な子が好きかな?」
好みのタイプはとミーハーな女たちにしつこく聞かれ、彼が苦笑交じりにそう言った。
その姿もまた綺麗だが、月くんを困らせるのは許せません。
まず彼と吊り合うなんて考えることが勘違いも甚だしい。
後でなんらかの処置をすることにしよう。
しかし、それからというもの彼の一言だけで学校に手紙ブームが沸き起こっている。
古風の代表、ラブレターだった。
人がいいのも彼の特徴で、もらった手紙は全て読んでいるようだ。
どこに出しても恥ずかしくない人間だ。
私の夜神月。
それはそうと、最近彼は私の告白を聞き流して真剣に聞き入ってくれない。
避けられているような気もするが、きっと気のせいだ。
恥ずかしがり屋なんてまたなんて可愛らしい。
そこで私は考えた。
彼の好みのタイプというのは、私へのメッセージだったのではないかと。
月くんは実は私からの愛の恋文を待っているのではないか?
賢い彼のことだ、恥ずかしくて遠回しに言ったのだろう。
なんて奥ゆかしく可愛らしい。
彼の期待にはなんとしても答えなければ。
恋人としての立場が廃るというものだ。
そうと分かれば行動を起こすのは早い方がいい。
あらゆる文具店、雑貨店からレターセットを買い占める。
そして綴るのだ。
私の愛を、一字一句。
受け取ってください、月くん!!
「流河…流河……流河……………最近流河ばかりだな」
家のポストから流れ落ちてきた大量の封筒の差出人を見て呟く。
そしてさっさと袋に拾い集めると、そのままポリバケツに放り込んだ。
何事も無かったかのように、自室に戻る月にリュークはちらちらとバケツを見ながら問う。
『月、見ないのか?』
ここ数日、毎日同じことを繰り返している月が少し気になるのだろう。
仮にも差出人はあの「L」なのだから。
月は、リュークの言葉にとても綺麗な笑顔でにこりと笑う。
そして台所から取ってきたりんごを空中に放り投げる。
リュークは嬉しそうにそれを受け取ると、そこから何も言わなかった。
月の怒りはいつも一緒にいる死神には恐ろしいくらいひしひしと伝わってきたからだ。
「見る必要なんて無いよリューク」
−END−
(愛が)届かないのか(手紙が)届かないのか。
2004.09.20
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