恋愛論






ルフィはいつも不思議に思っていた。
「んナミさぁぁん!なんて素敵なんだ!この気持ち…これは恋…いや、愛以上だぁあ!」
目をハートにさせて『恋』やら『愛』を語るサンジはルフィからしてみれば異様な光景であった。
恋?そんなもん食えんのか?と以前ナミとサンジに聞いたことがあったがナミは、
「あんたってば、何でも食べようとしないでよ」
と呆れられ、サンジに至っては
「お前、愛や恋ってのは言葉で説明するもんじゃあない。食べものかってーとそりゃあ最終的には相手を食べてしまえるのが一番だが…」
と語りだしたところでナミにド突かれて「ルフィになんてこと教えようと…!!」と説教が始まってしまった。
で・結局なんだったんだ?
と首を捻ったが、他のクルーには聞く気にはならず、そしてそれよりも盛大にぐうと鳴いた腹が気になって考えることをやめて「めしー!」と叫んだ。



あのときはすっかり忘れてしまっていたのに、今になって思い出したのは何故なんだろう。
「どうしたの?ルフィ」
じっと見つめられていたロビンは最近手に入れたばかりの古臭い本から顔を上げ、優しく問うた。
「ん?んーん」と生返事をしたルフィは胡坐を掻き掌にの上に顎を置き支えた状態のままじぃっとロビンを見るだけだ。
ルフィの行動などには誰にも読めないことが多い。それをよくわかっているロビンは答える気がないルフィを見て、ひとつ肩を竦め本に視線を戻した。
恋とは何なのか。誰も教えてくれなかったし、未だによくわからずにいる。
食べられるものでない、強くもないし、おもしろそうでも無いのなら興味を引くものでもないだろう。
なのに、ロビンを見ていると「恋」という言葉を思い出したのだ。
何でだ?
首を捻るとロビンはちらりとそちらを見やり、ひとつ笑みを浮かべて活字に戻した。
仲間は何より大切で、離れていても家族や友達やよくしてくれた島のみんなは大好きだ。
これが恋か?と思うとそれは違う、とサンジに言われるまでもなくわかる。それたちを思ってもサンジのように目はハートにはならないし、そいつだけを特別なように振る舞うことはできないからだ。
でもそこでひとつ思うのだ、ロビンを。
いつも大人な顔をしてるけれど、本当は泣き虫で楽しいことが好きで、ずっと子供なロビン。
誰かが、じゃない。おれが、守ってやりたい。
ルフィは言葉ではなく、そう思った。


『愛や恋ってのは言葉で説明するもんじゃあない』


ふいにサンジの言葉を思い出して、ルフィはアッとなった。
何だ、そんな簡単なことだったのか。
「なにか悩み事かしら」
ロビンはページをペラリと捲り、顔を上げずに静かに問う。ルフィはシシシと歯を見せて笑った。
「んー、や!もぉいいんだ!」
そこでやっと顔をルフィに向け、そうなのと意外そうに長い睫毛をバサリと揺らして瞬いた。


「ロビン、これ、きっと恋だ!」


そう言ったらその大きな目を更に見開くのか、それともいつもみたいに優しく笑うのだろうか。
笑っていてほしい。
ルフィはそれを考え、あーすげーいいなと思い、ついにその言葉を紡ぐための口を開いた。















   −終−






初めての恋のお話



2012.2.10