苦痛と快楽
思いがけず告白されて二ヶ月と三日。
告白を受けて丸二ヶ月。
唇を合せるようになって一ヶ月と十六日。
そして
「コ、ラ。旦那、やめろ、やめなさい」
押し倒されている今日この頃(そして俺が下なのか)
「大丈夫、佐助。某に任せておけ」
満面の笑みでどんと来いと言わんばかりの様子を見せる。
…旦那の中で俺が受け身なことは決定されてるらしい。
「その自信は一体どこから来るのよ」
旦那も男とは初めてのはずだから経験なんて無いはずだし。
「この日のために書物を読み漁ったのだ」
へぇ、意外。この日のためにねぇ…って違ーう!
勉強なんて嫌いなはずなのにこんなときだけ何熱心になってんのよ。
「それによると痛いのは初めだけだと言うではないか!」
そんなわけ無いでしょ!
「安心しろ、苦痛がやがて善くなるらしいぞ」
変態で無い限り無理に決まってる。
異色に走るのは取り立て珍しいことでも無いが、俺は忍には珍しくそういう仕事はしたことがない。
自慢じゃないが潜入捜査はしても房中はしたことなんか無いのだ。
戦忍で尚且つ実力のおかげだろう、有難う俺!何度そう思ったことか。
しかし、しかしながら、これはマズい。
ただでさえ痛い、苦しい、辛い、そう聞くのに真田幸村という人物の突っ走る性格を考えると、うまく行くわけない!
「では!いざ!」
張り切り過ぎるくらいに意気込んで、唇を寄せようとしてくる旦那とは反対に冷や汗が止まらない。
「〜〜ッ御免!!」
その言葉に一瞬気を取られた幸村が次に見たのは焦った佐助の顔ではなく…
距離を詰められていた先程の位置にあるのは丸太木。
変わり身の術。
佐助の姿はそこから後かともなく消えていた。
「佐助!卑怯だぞ!」
そんな声を聞きながら屋根裏を使ってさっさと部屋から離れる。
真田の旦那のためなら何だってするつもりだし、してあげたい。
でも。悪いけど、俺だってこの身が大事なのだ。
旦那ごめん、小さく謝ると梁を這う速度を速めた。
−終−
無理なもんは無理なんだって、無理無理!!
2005.10.13
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