今日ついに実行するときが来た。
知恵を与えられてからずっと見計らっていた瞬間は今だと告げている。
大きく息を吸ってから、ひと声。
「佐助」
呼んだ声は震えてはいなかっただろうか。
ぎゅうと拳を握り締める。
「呼んだ?」
しばらくもしない内に声が天井からひらりと舞い降り畳に影を作った。音は無い。
わかってはいたくせに佐助の登場にどきりと胸が鳴った。
「き、今日!昼の刻に裏の山の頂上に来てくれ!」
ええ、と顔を歪めたのはもちろん佐助。
「用があるなら今言いなよ」
「それはいかん!」
意味が無くなってしまう。
焦った声は思いの他大きくなってしまった。
驚いたのだろう、佐助は目を見開いている。
「ふーん?わかったよ」
納得したわけでは無さそうだが無駄だと踏んだのか、了解の返事をして佐助はそのまま姿を消した。
気配が完全に無くなってからやっと詰めていた息を吐くことができた。
「や、約束してしまった!」
心の蔵がドキドキと五月蠅い。
しかし、それよりも高鳴る約束という事実。

「佐助とでーと…!」

異国語を話す男の影響なことは間違えようが無かった。



愛しいあいつをやっとの思いで、





呼び出す








2006.1.25