ざわざわと賑やかに人が集う。
休日の町は華やかで、店の主人は物を売り、旅芸人は見せ物をし、誰もがその一時の平和なときを楽しんでいた。
それは普段戦に身を置いている武田自慢の戦人真田幸村とその忍も同じである。
久し振りに町に出た二人は、着物に身を包み愛用の武器を手にすること無く買い物を楽しんだ。
幸村お気に入りの菓子はもちろん、着物や気に入った置物など気の向くままに買っていたら荷物はいつの間にか片手では決して持て無いほどになっていた。
「別にいいって、俺も男なんだし」
佐助は少し前を歩く主に向かって呼び掛けた。
「恋人に重い荷物を持たせるなど!某には出来ん!」
言い張る幸村の両の手には買い物で得た全てが抱えられている。
「その前に俺はアンタの部下でしょ」
「前でも後でも関係御座らん」
全部を持つという言葉ははなから却下され、じゃあ半分、とその案もこうして断られ続けている。
「それに、力なら佐助より持っているつもりだ」
フンといきりよく鼻を鳴らす。
「言ってくれちゃうね」
双槍を使っての力任せの戦い方の幸村と手裏剣での速さと技術勝負の佐助では確かに力はかなりの差が出来ている。
それなりの量を持っているというのに重さなど感じさせずけろりとしているが、腕の筋を見れば力が入っているのはすぐにわかる。
忍が力をどうしても必要だとは思えないし、大体荷を持つのが仕事のわけは無いが同じ男としてやはり恨めしい。
佐助は着物の上から自分の頼り無さそうな腕を擦った。

「佐助はもっと某に頼って良いのだぞ」

ニッと人好きのする笑みを浮かべてこちらを見つめて来る。
ポカンと佐助は呆気に取られたが、すぐに吹き出して笑った。
忍が主に頼ってどうするんだ。
しかし嬉しく思う気持ちも間違いでは無くて。
「馬鹿だね、旦那」
罵ることで誤魔化した。
きっとそれもわかってしまっているのだろうけれど。



たまにはふたりで





どこかにお出かけ








2006.1.6