何が欲しい?




久々の逢引き。
真田の忍である佐助は、偵察だとか理由をつけて俺んとこに来たんだろ。
なのに、うちの屋敷に着いた早々、茶を立てる準備をしている。
流れるような動きで次々に用意していく様はとても忍とは思えない。
俺はというと、縁側に座ってそんな佐助の様子を見ているしかない。
「佐助、そんなことしなくていい、こっち来いよ」
用意くらい伊達の者がすればいい。
何でわざわざ甲斐から来てくれた俺の恋人が茶の用意なんぞしなくちゃなんねえ。
「いつも子守で疲れてんだろ」
「子守…あぁ、真田の旦那のこと?」
子守というだけで思い当たる人物は佐助自身も、真田しか思い浮かばなかったんだろう。
苦い顔をして笑った。
「Of course…アイツといるとき、休まる時なんて無えんだろ?」
いつも見かける度に、忍以上のことをさせている。
真田幸村自身は、そんなことは思っていないだろうが、こっちから見りゃよくわかる。
ベッタリとくっ付いて、女官にでもさせるようなことを佐助にさせていやがる。
佐助も佐助で、断ればいいんだろうけど。
ま・忍がそんなことできるわけないか。
それにしても、付け込みやがって、更にムカつくぜ。
「俺といるときくらい、好きなことさせてやりてぇんだ」
忍としてじゃなくて、俺は佐助が好きだということ。
だから何をしろなんて言わない、言うつもりも無え。
なのに、こうして佐助が働いているのを見ると、あの馬鹿と同じなような気がして気分が良く無い。
自由にしててもいいんだぜ、と言うと佐助は柔らかく笑う。
「俺は好きでやってるんだよ、気にしないで」
「お前は甘いな…そうやってアイツにも甘いんだろ?」
つまんねえ。
俺にだけだったら別に構やしねぇけど。
それは誰に対しても、だ。
結局は世話焼きが性分なんだろう。
佐助は湯を沸かしている茶釜を掻き回していた手を止めて静かにこちらに歩み寄る。
「俺の竜は独占欲が強いんだねえ」
笑いながら俺の横にすとんと腰を下ろした。
肩に掛かる微かな重み、目に付く赤茶の髪。
寄りかかってくる佐助の頭を静かに撫でてやる。
「Honey、何が欲しい?」


「じゃあ、接吻をひとつ」


OK。
小さく呟くと、可愛くねだる恋人にキスを贈った。







   −終−







Baby...I will give you my kiss.




2005.11.04