周知の事実
先陣を切って戦場を突っ走った。
お館さまのため、槍を振るい、目指すは総大将。
そこで知らぬ者のおらぬ武将が立ちはだかり、この場では感じられない気に槍を構えて矛先を向けた。
「Hey!真田幸村、珍しいな。今日は一人か?」
知らない国の言葉を繰り出しながら、そ奴は腰に挿した剣を一つも抜くことは無く話しかけてくる。
切先を向けられても動揺することなく落ち着いた風を見せるは、独眼竜伊達政宗。
伊達殿に会うのには正直驚いた。
会うことも無いだろう関係の無い戦だったから。
戦う意志が無いようだが油断はできない。
しかし気になることを言われては答えるしかない。
「ム。どういうことだ」
「佐助はいないのかってことだよ」
佐助。
傍らでいう佐助など、知る限り猿飛佐助しか思いつかない。
「何故」
佐助と名を呼ぶ。
まるで探し求めていたような口調で、佐助の所在を聞くのだ。
強く握った槍は切先は気持ちを表すようにふるりと震える。
余計なことを言われる前に斬ってしまいたい、そんな感情さえ芽生えてくる。
「そんな顔するんじゃねえよ、Coolじゃないねぇ」
そんな顔とはどんな顔だ。
伊達殿は手を挙げ、肩を竦めて息を吐いて見せた。
「ま、惚れた相手のことだ気になってしょうがねえだろうがな」
「な、な、何と!」
「マジかよ、まさかバレて無ぇと思ってたわけ?」
鼻で笑って見せる伊達政宗。
顔に熱が篭る。さっきまでとは別の、淡い熱。
別に伊達殿とは友でもなんでも無く、話したことだって多いわけではない。
戦で佐助と居たときに居合わせたのだって数少ないはず。
大体こんなこと、お館さまにだって言ってないのに。
違う軍であるくせに、何で伊達政宗が。
そんな。どこから?
「アンタが忍の長のこと好きだなんて誰でも知ってるぜ」
ああ、そう、そうか。誰でも知っておるのか…。
待て。誰でも!?
まさか佐助も!?
「赤の真田幸村、ハッ。今日から色替えか?」
血の引いた顔を見て伊達殿は楽しそうに笑った。
−終−
く、くく、くわしく教えてくれ!
2005.10.15
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