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被害者
アイツの店のジン太という少年が、店から幾分も離れた帰り道で立っていた。
いつも子供ながら偉そうなガキだと思っていたが、今日はいつにも増してという感じだ。
仁王立ちで腕を組み、狭い道の真ん中にズンと立っている。
何のようだ、と眉を寄せると、すぅと息を吸い込んで声を張って言った。
「お前うちの店長に何か言ったか?」
出てきた言葉に目を瞬かせる。
「何かって…何で」
「恐ろしく沈んでんだよ」
あぁ、とその図を想像できてしまう。
「店長凹ますなんてオレンジ頭くらいだろ」
「あーそー。」
まったく、いい年扱いて。
浦原という男は少し突き放すとすぐに拗ねる。全く、ダメな男だ。
溜息を吐きながらガシガシと頭を掻くと、小さなガキは俺以上に深く溜息を吐いた。
まだ大きな目でギッと力強く睨まれ、眉を寄せてしまう。
「まったく、いい加減にしろよな」
浦原の肩を持っているのか、そうだとしてもそんなことを言われるなんて心外だ。
困っているのはこっちのはずなのに。
「あのな、俺はどれだけアイツに迷惑掛けられてると思ってんだ。俺は被害者だぞ」
そうだ。だからそんな目で見られることなんて何一つ無いはずだ。
悪いことなんて一つも無いじゃないか。
しかし次のジン太の言葉に、声を失ってしまうことになる。
「店長とお前の都合に振り回される俺たちのがよっぽど被害者だぜ」
-終-
あぁ、そりゃ確かに。
2005.07.01