tendency




夜中に寝て、昼頃目を覚ます。
それが俺の日課だ。
仕事が無いからと、早々にベッドに入り、睡眠を貪っていた。
心地よかった眠りは、肌を這う嫌な感覚に一瞬で消え去ってしまった。
「それ以上触ったら確実に撃つぞ」
シーツの下に忍ばせておいた銃を突き付ける。
寝ている人の上に跨って、半裸なのをいいことに寝込みを襲っていたのは予想通り、銀色の髪の見覚えがある男だった。
「撃てるかな?実の兄を」
口元だけで笑ってみせる。
手は止めたが、上から退こうとはしない。
「実の兄が実の弟を襲うか、お前なんか兄貴じゃねえ」
こんなことがもう何回あっただろうか。
始めこそは生真面目な兄の、性質の悪い冗談だと思っていたが、どうやら本気も本気。
昔こそは慕っていた兄だったが、この男は弟にまで欲望の対象にできるゲイだったのだ。
男が好きという性癖については、自由だし好きにすればいいと思う。 が、弟まで手を出すのは勘弁して欲しい。
「何言っている、誤解だ。ダンテ」
兄は無愛想な顔を更に真面目にして、

「実の弟だから襲うんだ」

……眩暈がする。
起き抜けだからか、嫌、違う。
「死ね、俺のために死んでくれ」
躊躇うこと無く引き金を引いた。







   −終−







実の弟だから襲うってどういうことだよ




2005.11.04