return to
正直朝には弱い。
微かに差し込む光を感じ、ベッドに座りながら働かない頭のまましばらくボーっとするのが常だった。
誰が咎めるわけでも無い、それが普段の生活。
少し動けるほどになってから部屋を出て、キッチンに向かうのだ。
その足取りも重く未だ頭は呆然としている。
「おはよう。ダンテ」
「……はよ」
返す言葉も億劫で言葉短く終わらし、椅子にどっかと腰を下ろした。
「朝飯はできているが、コーヒーが良いか?それとも紅茶か」
「コーヒー……」
そこで違和感が生じて、意識は一気に覚醒する。
ちょっと待て。
俺は一人暮らしのはずで、ここは俺の家で。
誰もいないはずなのに、何故…何故ナチュラルに、
「バージルがいるんだ」
呟いた言葉にカップをポットを手にしたバージルが振り返る。
「お前が一人では生活できないほどだらしない生活をしているからだろう」
溜息と同時に吐き出された言葉につい、もっともだと思ってしまった自分に慌てて内心ツッコんだ。
「アンタ、死んだんじゃ…」
「ほら、さっさと朝飯を食べてしまえ、片付くものも片付かん」
「あ、おう」
コーヒーを置かれ、それを啜ってから見事に揃えられた出来たての朝食に手を伸ばす。
バージルも向かいの席に座り、マグカップに注いだコーヒーを口に付けながら食事の様をじっと見守っていた。その様子は少ない表情ながらも嬉しそうで、不気味だ。
俺まだ寝ぼけてんのかな。
黙々と食事を口に運びながらぼんやりとそんなことを考えるが、食べれば食べるほど目は確実に覚めて、眠りとは程遠いところにいっている。
とりあえず食べ終わってから顔を洗いに行こう。それからもう一度名前を呼んで確かめることが先だ。
本物だったら…そうだな、一発殴っておくか。
綺麗に切られた最後のトマトの一切れをフォークに串刺し、口に運んでから熱いコーヒーを口に含んだ。
−終−
さ、食事は終わりだ
2010.09.20
|
|