初会
ひゅうと風が鳴る。
部屋の中だというのに突然起こるその風に、異様さを感じる。
窓はガタガタと揺れ、コレクションである剣や頭蓋骨が音を立てた。
そして一つの人影がそこにゆらりと現れた。
「マスター・ダンテ」
初めて姿を現したときは驚いた。
力の強い魔剣で、話しかけて来たのは最初を思い出せば、まあそんなこともあるかなと思い直す。
そいつは人間では有り得ない顔色の悪さ、跳ねる黒髪に尖った耳とひょろりと見え隠れする尾、そして悪魔だというのに神父の格好をしていた。
パリパリと雷が散って見えるのは、やはり彼が「アラストル」だからなのだろう。
名乗ったわけではないのに、ソイツだとわかった。
「何だ、ただ剣が喋れるだけじゃなかったんだな」
声を掛けると、彼は口の端を上げて笑った。それだけなのに、とても嬉しそうだった。
「マスター、ずっとこの姿で会いたいと思ってた」
「それはそれは」
剣でも人間の体格だろうと関係無い、ダンテはおかしなものだと笑った。
「たまに、この姿になってもいいかな」
眉をハの字にして問うその姿は、親に叱られている子供のようだ。おかしなものだ、ずっと長く生きているのはそちらの方だろう、おかしくて笑いが止まらない。
その間も、不安そうにアラストルはこちらの答えを待つ。
「好きにすればいい、俺は別にお前の全てを縛るわけじゃない」
そう言ってやると、今度はパッと顔色を明るくさせた。その長い尻尾が犬のように揺れそうな勢いだな。
おかしな奴だ。
子供のような奴だ、あんなに強い力と雷を秘めているとは到底思えない。
それでもそんな姿を見ても「気に入った」とまた笑った。
−終−
よろしく、マイマスター
2005.12.18
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