Jesus!
今日の仕事も、もちろん深夜。
多い敵に多少の疲れを感じながら、いつものように事務所に帰って来た。
まず、何は無くとも風呂だ。
ソファーを通り過ぎて、風呂に向かう途中、見たことも無いものをみたような気がして足を止めた。
「ちょっと待て。何でお前がここにいるんだ」
それはあまりにもナチュラルにそこに座っていた。しかも本まで読んで。
「酷い言い草だな、愛する兄に向かって」
「愛して無い」
それよりまず、何でその兄が俺の事務所兼自宅にいる。
音信不通になったかと思えば、次に会ったときには敵になっていた。
そして何に吹っ切れたのかもう後戻りできないくらいに壊れていた。
兄と言うより変態だ。ただの。
「何を言っている、愛してると言っただろう?」
「いつ。いつの話だ」
俺は間違ってもこんな変態に自ら愛してると言った覚えは無い。
だから、どうせこれは兄貴のまた下らぬ妄想に違いないと高を括った。
するとバージルは自信満々に、腕組をし、遠くを見だした。
「そうだな、まず4歳の4月8日。可愛い笑顔を浮かべながら愛してると言ってくれたぞ」
その愛してるは、家族として、だろ。
大体…
「何故ガキの頃なんか覚えてんだ、アンタ」
なんか、思い出をちゃんと覚えていてくれて嬉しい!とかいうより気持ち悪い。
「愛するダンテのことだ、忘れるわけないだろ」
嫌な予感…。
「まさかそんな頃から、妙なこと考えてたのか?」
違うと言って欲しい。
あの頃の俺は、兄が好きで、大好きで慕っていた。
尊敬もしていたし、一番信頼も出来た。
その、その兄に、慕っていたその頃から、まさかそういう目で見られていたなんて、そんな…
違うって言ってくれよ、バージル。
「当たり前だ」
ジーザス。
「………殺す、いや、むしろ死にたい」
昔の俺よ、思い出せば思い出すほど悲しく、なんて愚かなんだ。
ちなみに、少し泣きそうだ。
「駄目だぞ、命は大切にしなければ」
ポンと肩を叩かれる。
説く様はまるで神父のようだが、騙されるか。
「俺を散々斬ったりした奴に言われたく無ぇ台詞だぜ」
どうせ、そんなこと言っても無駄なんだろうけど。
今の俺には項垂れるしか無かった。
−終−
頭がイカれちまったらしい。
2005.11.04
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