対面
ホールのソファに座って寛いでいたダンテに一人の影が近付いていた。
ダンテはだらりと預けていた背中をシャンと伸ばして口の端を上げて笑う。
「バージル…って、呼んだ方がいいのか?それともネロ=アンジェロ?」
「バージル、と」
鎧の騎士がほんの微かな微笑を浮かべながら応える。
その表情にダンテは顔を顰めた。
ダンテの歪めた表情を見て、またバージルも顔を顰めて見せた。
「何故そんな顔をする?私が怖いか?」
バージルにはわからなかった。
話す度に眉を寄せる弟が。
何をしたという記憶も無いので、バージルには聞くことしか出来なかった。
「そういうわけじゃねえんだけど」
ダンテは困ったように頭を掻く。
唸っている彼を、バージルはじっと見つめ言葉を待った。
「……なんていうかな、俺の知ってるバージルとギャップがあって…慣れねえんだ」
悪い、とまた困った顔をするダンテ。
俺の知っているバージル、という言葉に此処にいるバージルは顔を歪めた。
「ならば、私はどうすればいい?どうすればお前の兄のようになるだろうか」
「いや、そういうんじゃなくて」
生真面目な答えにダンテは慌てて否定をした。
そういうつもりでは決して無かったからだった。
「アンタはアンタでいいんだ、押し付けるつもりなんて無いさ」
真っ直ぐに応えようとしてくれているバージルに、ダンテは気恥ずかしく思いながらも自分の内を見せる。
「ただ、悪い、慣れるまで待ってくれ」
上目で伺うように言われて、バージルはまた真面目に頷き「わかった」と短く伝えた。
その様子に少なからずダンテは安堵の息を浮かべる。
「しかし、もう少し警戒心は解いてくれ、お前と居られなくて寂しい」
恥ずかしげも無くハッキリと言われた言葉にダンテは目を剥いた。
それから徐々に言葉を飲み込んでいくのが顔の色で分かる。
最後には顔をこれでもかというくらいに真っ赤に染め上げ、俯いてしまった。
「……どうした、ダンテ?」
動かなくなった弟を、バージルは素直に心配してみせる。
それに対しても、ダンテは何も返すこともできなかった。
−終−
なんかもう、まいったな…
2005.11.24
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