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晩餐の話
席に着いた二人はまだいぶかしげにダンテを見ていた。
ダンテはというと視線を感じているにも関わらず少しも目を向けず、ただ静かにバージルの進行を聞いている。
聞いているスタイルを取っているだけだというのは彼をよく知るものならその口端の笑みでわかったのだろうが、あいにく、そういう人物はここにはいない。
「ここにいるのは、弟ダンテだ」
バージルの一言に部屋中にざわめきが起こる。
それはそうだろう。死んだと伝えられている人物が今、その足を組みながら堂々と椅子に腰掛けているのだから。
「事情は私も詳しく聞いていないから伝えることはできないが、それよりも今、我が弟が戻ってきたことを祝ってくれ」
バージルの声に一度はざわついた室内も、まるで引き寄せられるかのように拍手の波が襲った。
驚いた顔や、笑顔を浮かべているもの様々だったが、部屋にいる全員から拍手を貰い、当の本人は嫌そうに顔を顰めた。
バージルはそれを見て薄く笑うと、彼の肩を叩いて口先で一言二言口にする。
目の動きを見て、ダンテはああと呟いた、これもまた困った顔で。
「ダンテだ。あー…まあ別に俺のことは気にしないでいいぜ、好きにするし」
それだけ言うと、また椅子にどっかと座った。
呆れた顔をするベリルと目が合って、ダンテは顎で示した。慌てて立ち上がるベリル。
「彼と一緒にここへ来た、ベリルよ。よろしく」
意外に緊張していたのか、少し裏返った声にダンテは笑う。
「ダンテも、ミスベリルもようこそ。歓迎する」
形式ばった城主らしい口調だが、それは本当だということは伝わった。ベリルは小さく「ありがとう」と呟くと腰を下ろした。
「私のすぐ下に仕えてくれている部下を紹介しよう」
バージルは部屋を一度ぐるりと見渡した。
「まず、二人を連れてきたシャドウ」
すぐ横の席にいたシャドウにダンテは笑みを見せた。
部屋まで案内をしてくれ、茶の席で先に少し話した相手。
黒髪と黒いコート、真面目な青年顔で、中身も忠実な性格と思われ、ダンテは初めてにしては好いていた。
「それから、先程遅れてきたのは右がグリフォン、左はファントム」
「ああ、やっぱり」
直属の部下だったか、とダンテは漏らす。
黒い髪に隠れて目はひとつ、軽そうな格好に口元を覆ったマスクの男は武器を先程借りた相手。彼がグリフォン。
赤髪の大柄で、喋り方も声も大きく、武器までも異様なでかさだという何もかもが豪快な男はファントム。
ひらひらと手を振ってやると、二人とも困ったような顔でお互いの顔を見合わせ苦い顔を見せた。それにまたダンテはククと抑えて笑った。
ダンテは二人にここに来るまでに会っている。そうとも知らないバージルは、ダンテの反応に少し首を傾げたが、何も話す様子も無いのでそのまま続けることにした。
「前にいるのがブレイド。その隣がフロスト」
「よろしくお願いします」
金髪の長い髪を肩の辺りで結わえた男が軽く会釈をした。
笑顔を見せているが、放たれている気はそこ等にいるものでは決して無い。薄い眼鏡と口調が賢そうに見せている。
その隣、フロストと紹介された彼は黒になりきれていない白。黒とも言いがたい暗い色の髪を無造作に伸ばした男だ。長い前髪から覗く灰の目が鋭くダンテを睨みつけている。
なんだ、と口を開こうとしたとき、
「双子、とお伺いしていたのですが、えらく小さくあられるのですね」
そんな言葉が金髪の男、ブレイドから聞こえダンテは気も削がれガクリと肩を落とした。
「俺が小さいんじゃないぜ、アンタ等がでかすぎるんだ」
睨みつける、というより上目で睨むようにして見せたダンテに、ブレイドは一度きょとんとしてからおかしそうに笑った。
「以上が私が仕事を任せている5人の部下だ」
微かに笑みを浮かべながらバージルは言いたいことは、とダンテに問うた。
ダンテはあからさまに嫌々しそうに首を振って
「こういうお堅い場はやめてくれると助かる」
と漏らした。バージルはまた薄く笑うと、その通りだと手をひとつ叩いた。
-終-
盟主に仕える5人の部下と出会うとき
2006.1.4