快感。

難事件は許せないと同時にものすごい快感を感じさせた。
真実に迫って行く、パズルがひとつひとつ埋まっていくあの高揚は私の生きていた中で何よりの興奮剤だった。
私はおかしいのかもしれない。

それでもやめることなどできないけれど。





「さっきからなんだよ流河…」
綺麗な眉を寄せ振り返ったのはキラ事件で一番の容疑者である夜神月。
キャンパス内でも目立つ彼はその顰めた顔でさえ人目を引いていた。
それは私も含めて。
「なんですか?」
「なんですかじゃなくて僕のこと見ていただろ?」
「あぁ……」
そのことか。
「何か用なんじゃないのか?」
「特に何も無いですけど」
「ふぅん…」
彼は興味が無いのかあっさりと手の中の小説に視線を戻してしまう。
その態度が少し癇に障ったが、それでも先ほどと寸も変わらず夜神月に目を向ける。
字を追う瞳は若干伏せられて、色っぽい。
色素の薄い長めの前髪も度々揺れて美しかった。


私の視線が向いていることに気付きながらも活字を追う。
問うても無駄だと思ったのか、気付いていながらも何事も無いように流している。
本に意識を向けながらも全身で私を感じているのだ。


ビリビリと身体の細胞が粟立つのを感じる。


これは……






そのときチラリと夜神の視線がこちらを向いた。




ゾクリ。


背筋に冷たいものが走る。
一瞬のことだったが、確かに彼は私を見た。
優等生としてでも無い、友達としてでも無い。
"L"として捕らえた瞳。










なんという快感。
事件の他にこれほどまで、高揚させるものがあったのか。
自分にもこんな感情があったのかと笑いが漏れてくる。

「何笑ってるんだ、流河」

ハッキリとこちらの姿を捉えて、顔を歪めて問う。
不快だという顔を出している夜神。
それさえも私の中でじわりと広がる。









夜神月という、快感。

これは今まで以上にやめられそうにない。










   −END−


おとなしくしていたものが目覚める。
貴方が欲しくて暴れだす。

2004.09.06