ミント



珍しくホテルの捜査本部は出払っていて二人しかいない状態だった。
椅子で向かい合い、資料を手にキラについて探り合いをしているときのこと。
「夜神くん、何食べてるんですか?」
小腹が空いたのを紛らわすように口の中に放り込んだ物をじっと見ていたLは興味有り気にそう聞いた。
一瞬何を言っているのかわからなかったが、すぐに手の中の物だということに気付く。
「これ?タブレットだよ、竜崎はこういうの食べないの?」
カラカラと箱を揺すってやると、それに合わせてLの目が箱を追った。
「食べません。それは薬みたいなものですか?」
「ハハッ。違うよ、お菓子だよお菓子」
薬のような外見だが。
本当に知らないのだろうか?
それでもお菓子と聞いたLの目は輝いた。
「お菓子?甘いですか?」
「残念だけど甘くは無いよ、どっちかっていうと辛いんじゃないかな。何、興味ある?」
「はい、とても」
目を箱から逸らそうとしないところを見ると、かなり気になるらしい。
くすりと笑うと、箱の入口を開ける。
「手出して」
前かがみになり、手を伸ばす。
そこへいくつか白い粒を落としてやった。
Lは無表情ながらもわくわくした表情を見せて口に放り込むと口の中で味わう。
「…………」

「どう?」

「…スースーします。あと舌がヒリヒリするんですが……」

「ハハッ、だろ?」
予想通りで気をよくしてしまう。
甘いもの好きのLには合わないとわかっていても、あからさまに嫌そうな反応はこちらとしては嬉しい。
そんなこちらをチラリと見たLは天井を見上げてポツリと呟く。
「あぁそうだ」



「なん……ン!?」
聞き返す間も無く、口を塞がれる。
突然のことで避けることも突き飛ばすこともできなかった。
「こうすれば甘くなります」
体が離され、ボーゼンとしている月にLは舌を見せながら言い放つ。
「りゅ…っ!」
怒りや何やらで赤く染まってしまった顔を隠すために焦ってしまう。
Lはまたチラリと見て、ふいと逸らし手の中の箱に目を向ける。
「たまに私にもください、それ」


月くんの口で


「絶対嫌だ」

彼の含んだ意味を理解してしまって、眉を寄せて拒否を見せてやる。
じぃと見つめる視線を避けて、白い粒を二、三個口に含む。
ここぞとばかりに伸びて来た腕から逃げるように、奥歯で噛み砕いた。










   −END−


貴方からのものはすべて甘い。

2004.09.06