キャンディ



字の羅列された紙を目線まで持ち上げて眺める。
それは癖で。いつものことだった。
見開いた目で文章の奥深くまで読み取る。
黒い文字ばかりだった視界に突然、色が降ってくる。
と、同時に頭が痛い。
色の原因を摘む。


それはたくさんのカラフルなキャンディだった。









「ビックリしたか、竜崎?」



頭上で袋を逆さに向けながらクスクスと静かに笑う青年。
夜神月だった。

「驚きました」

微かな痛みは頭に落下された、たくさんのお菓子らしい。
下に広がるのはたくさんの綺麗なキャンディ達。

「今日はハロウィンだろ?竜崎なら絶対にお菓子を欲しがると思ってね」

自分で落としたにも関わらず散らばったそれらを一つ一つ拾い始める。
綺麗好きの夜神らしい行動だ。
今日はハロウィン。
彼が現れたら確かにそう所望しようと思っていただけに、彼の発言には驚かされる。
夜神月は読みがいい。

「先手を打ってきましたか……さすがですね。しかし何故キャンディばかりなんですか?」

お菓子を買ってきてくれたというのはわかる。
しかしキャンディは竜崎が特別好きな物というわけでも無い。

「チョコレートなんかはすぐに無くなるだろ?飴の方が物持ちいいかなって」

こちらは「あぁ…」と納得したように呟いた。
普段から食べている横で、彼は少しは控えろと言っていた。
キャンディならすぐに次に手を出さないというわけか。

「それに竜崎の上に落としたら痛い物を選んだ」

手を出せ、と言われ素直に差し出す。
すると拾い終わったキャンディをそのまま渡される。
落ちそうなくらいたくさんの色を腕いっぱいに抱える。
頭に落下させるのが当初の目的とわかると眉を顰めずにはいられない。

「酷いですね」

若干睨んでやると彼は小さく笑い、拾ったキャンディの一つの包みを剥がす。
小さな棒付きキャンディ。
ピンクとホワイトのビニールの中から出てきたのは淡い二色。
キャンディを支えている棒を彼がくるくる回すと螺旋状にふたつの味が踊る。
大したことないことのはずのそれはとても綺麗で、思わず見入ってしまう。
夜神はキャンディの先にそっと唇を寄せる。
その行動にドキリとどこかで音が鳴った気がした。



「飴あげるんだからそのくらいいいだろ?」



にこりと笑う彼。
口の中で広がるのはストロベリィミルク。







スティックだけになったとき、この愛しい青年をどうしてやろう







その甘さに酔いながら、口の中で転がした。














   −END−


ハロウィン+50000HIT感謝限定フリー小説。
報告は自由です。個人の判断にお任せします。

ハッピーハロウィン☆&5000HITありがとうございました。

2004.10.29