かなしきひとよ、いとしきひとよ。


愛しき人よ、愛しき人よ。









「月くん貴方が愛しくて仕方ないんです」


言われている月といえば返事を返すことなくにこりと微笑む。
竜崎はそんな彼の唇を奪い、笑みさえも奪ってしまう。
それが常。







疲れていたのか竜崎が月の前で眠っている。

いつも月の前では必ず起きている彼が。
どんなに抱き合ってもキラとしての疑いからか眠ることをしなかった竜崎は腕に抱いたまま目を深く閉じていた。
彼と寝るのは何度目になるだろう。
告白を受けたときは驚いたが断るなんてしなかった。
むしろ笑みが零れたくらいだ。
これは好都合だと。
竜崎を見つめながら口に笑みを浮かべる。



「君は愛しき人だ、L」



小さく呟いた言葉は闇に吸い込まれ消えてしまう。
もしかしたら起きているのかもと思っていた隣の男は先程と変わらず息を静かについていた。
それがわかると、彼の胸に擦り寄り目を閉じる。
まるで呟いた空間とは別だったかのように。
そのまま呆気なく意識を手放し夢へ走る。







吐息が寝息に変わった頃、ちらりと目を開けた男。
聞いてしまった言葉を確認するように腕の中の存在を見つめ、また目を伏せる。
二人、寄り添いながら眠りにつく。
遅い朝を待ちながら。










愛しき一夜、愛しき一夜。


かなしきひとよ、いとしきひとよ。















   −END−


かなしい、と、いとしい、同じゆえに愛と書く

2004.10.20