今日、この部屋に来てからこれ見よがしにテーブルに置いてあった箱。
嫌な予感がしたから今まで触れずに来た。
「月くん、プレゼントです」
そんなこちらに痺れを切らしたのか竜崎が口を開いた。
僕としては、ついに来たという感じか。
すぅと大きく空気を吸って、一言に力を入れる。
「いらない」
竜崎は意外だと思ったのかピタリと固まった。
「そんなハッキリ……受け取ってください」
「だからいらない」
箱を僕の方に押して勧めてくる。
その言葉と態度をスッパリと切り落とす。
竜崎は少し不機嫌そうな表情を見せた。
「何故そこまで拒否するんです?受け取れ無い理由でも?」
「いや、ただホントにいらないんだ。どうせくだらない物だろうし」
苦笑を浮かべながら、目の前にある箱を竜崎の前へ押し返した。
「そんなことありません、素敵な物を用意してあります」
素敵な物、という単語につい溜め息が漏れる。
「へぇ今までそう言って何を渡してきたか覚えているのか?」
今までくれたもの…
竜崎とペアのマグカップ、竜崎のフィギュア、撮った覚えの無い竜崎との写真100枚。
他にもたくさん。
意味がわからないものばかり渡して来るのだ。
「どれも素晴らしいものばかりです」
満足そうにニッと笑う。
「いらないものはいらない」
全身で拒否を表し、断る。
竜崎は自分の前に戻ってきた箱を何か考えているかのように見つめた。
この間にさっさと帰ってしまおうかと、ジャケットを手にし、立ち上がる。
「…そうですか……ではもらっていただくまで帰しません」
意識がドアに向かったとき、腕はしっかり竜崎に掴まれていた。
鋭い探偵の瞳で見上げられる。
これは無視をして帰れそうも無いと判断する。
「………わかったよ、受け取ればいいんだろ?」
溜め息を吐きながら体を椅子に戻した。
竜崎は嬉しそうに目を緩ませた。
「えぇ。どうぞ、月くん」
テーブルの前に、先程の箱が置かれる。
熱い視線を感じながら、進むしかないとゆっくり開けた。
しかし、それを見た瞬間固ってしまう。
「……何だこれは」
り、理解できない。
呆然としている僕に竜崎が嬉しそうに口を開く。
「白い靴下です」
箱の中に敷き詰められた白い靴下。
「そんなもの見ればわかる、何故これを僕に渡すのかと聞いてるんだ」
「似合うと思ったからですよ」
じっと靴下と僕を見比べ、うっとりと微笑む。
その仕草にゾッと背筋が寒くなり、言葉が出てこない。
「服を恋人に贈るのは脱がしたい、という意味らしいですが」
指を唇に当て、天井を見上げて淡々と言葉を呟く。
「私はそんなこと思いませんので安心してください」
誰が恋人だ、とか。
履くわけが無いだろ、とか。
靴下は脱がさないのか、とか。
色々な言葉が過ぎったが、まず僕が口にした言葉は。
「気持ち悪い」
という一般的なものだった。
−END−
気持ち悪いものは気持ち悪い。
2004.10.16
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