ランチタイム




捜査本部で何か食べているLを見るのはよくあるが、お菓子以外見たことが無い。
何か意味があるのかと思ったが、ただの甘党なだけらしい。
甘党というだけでは無い。
なんというか……コイツはお菓子しか食べない。
神経がおかしいんじゃないかと思っている今そのとき、ワタリさんが持ってきたチョコレートに手を伸ばしていた。
「竜崎、お菓子ばかり食べているとそのうち病気になるよ」
ピリピリと銀の包み紙を剥がし一口で頬張る男に椅子の隣から声をかけた。
「たまには普通のご飯でも食べたら?」
別に体調が気になるとかではなく、ただ一緒にいる以上近くでお菓子ばかり食べられると気になるのだ。
竜崎は伸ばしかけた手を下ろして、膝を抱える。
「月くんがそういうなら…」
しばらくしてボソリとそう言う。
我慢してそう言っているのがよくわかって笑いがついこみ上げてくる。
小さな子供みたいだ。
さっそくルームサービスでランチセットを頼む。
しばらくして運ばれて来たご飯はふわりと匂いを漂わせる。
しかし等の竜崎は目の前のテーブルに置かれた物に手をつけようとしない。
「どうしたの?食べなよ」
近くのソファに腰掛ける。
食べると言ったくせに一向に動かない竜崎に不満に感じてしまう。
「食べさせてください」
黙って食事を見つめていた彼が口を開いた。
「は?」
いつもの自分らしくないまぬけな声を出してしまう。
それはそうだろう。
「月くんが食べさせてくれるなら、食べます」
突然の要望に眉を寄せてしまう。 確かにこちらが食べろと言ったが食べさせるなんて思ってなかった。
そんなこと御免被る。
「嫌だよ、何で僕が…」
「なら食べません」
即答で答える彼が癇に障る。
「じゃあ食べなきゃいいよ」
そこまでして食べさせる義理は無い。
もう放っておこうと、離れようと席を立つと後ろに立っていたワタリさんに声を掛けられる。
「夜神様」
「ワタリさん」
「竜崎が一般の食事を取ってもいいというのは5年ぶりのことなのです。」
落ち着いた口調で言っているが、内容はそうでも無い。
「ご、5年……」
5年もお菓子だけで過ごしてきたというのだろうか。
よくそれで生きてこられたと目を見開いてしまった。
「どうかお願いできないでしょうか…」
恐縮そうにお願いされると困ってしまう。
そもそもワタリのようなキッチリとした人に願い事をされるのは弱い。
「ワタリさんがそういうなら…」
息を吐いて、もう一度腰を下ろした。
「ありがとうございます」
ワタリは嬉しそうに口を緩ませたようだった。
フォークを手に取ると、一口で食べれるように小さく切る。
そしてそれを刺すと竜崎の口へと持っていく。
「ほら、竜崎」
食べられるようにしてやったのに竜崎は口を開けようとしない。
「なんだよ、口開けなきゃ食べられないだろ?」
ほら、と急かしてもちらりとこちらを見ただけで口を動かそうとはしなかった。
「竜崎…!」
イラついて声を荒げると口を小さく動かす。
「あーんって言ってください」
「はぁ?」
何言ってるんだコイツ。
「あーんって言ってくれないなら開けません」
「…………」
くだらないと呆れてしまう。
今すぐこんなことやめて帰ってしまいたい。
しかし、
「夜神様……」
「わかってます」
言われたことを投げ出すなんてそんなことできるはずも無く…
不本意ながらも竜崎の言う通りにする。
「ホラ。あーん……」
そう言ってやると嬉しそうにいつも以上に目開いた。
「あーん」
パクリとフォークに食らいつくと満足そうに食べる。
「おいしいです、月くん」
不気味ににこりと笑う。
「そう、それはよかったね…」
もっと、とせがむ竜崎に同じように口に運んでやる。
チラリと後ろを見ると彼の保護者は涙を浮かべているのが見える。
そこでやめるわけにもいかず、ランチが無くなるまで続いた。


お得意の笑顔を浮かべながら、心の中で悪態をつく。




いつか殺す……!!










   −END−


初デスノート。
屈辱だ!僕の手で必ず…!

2004.09.06