星座






広い広い空を呆然と眺める。
もちろん空を見やるのが本題ではなく、頭の中のものが本題なのだが。
「なーにしてるんスか?」
視界に、にゅと出てきた顔に思わずのけぞってしまう。
「え?うぉ!浦原…さん!」
「アタシのこと放ったらかしで…ひどいじゃないですか」
何してたんです?と浦原が聞く。
うまい理由も何も思いつかないで、えぇ、ああとなんて唸っていると、浦原は同じように空を眺め。
あぁ!と声を張った。
「星を見てたんスか」
え、とその空を見ると、藍色の中にキラキラと光るそれら。
「デネブ」
ひらりとその長い指がひとつの明かりを指差す。
「ベガ」
すうと、その次の星。
「アルタイル」
その次の星。
何の意味があるのかはわからないが、その動きに見入るように食入る。
その男は、そんな俺を見て、少し苦く笑う。
「夏の大三角形っスよ」
そう言いながら手元で小さく三角を作って見せた。
「へぇ」
そういえば確か小学校の頃、理科という授業で聞いたことがある気がする名前だ。
「学生さんなのに、黒崎サンたら」
「そんなの覚えてねぇんだよ」
浦原が指した三つの星。
それを自分でも辿るように指で追う。
デネブ、ベガ、アルタイル。
「夏の大三角形」
たくさんの星の中で光って見えるそれは、名前を呼ぶと一層綺麗に見えた。
「黒崎サン、そろそろアタシにも構ってください」
大人気ないことを平気で言ってのける浦原。
視界を塞ぐように、顔を寄せて、口付けてくる。


別に星を見てたわけじゃないけど、こんな浦原さんは嫌いじゃない。
だからそういうことにしておこう、そうゆっくり目を閉じた。















   −終−






こんな単純なものより、占めるのはひとつだけ



2005.11.22